2012年12月6日木曜日

図南の翼

図南の翼、十二国記の話の一つ。

あらすじは、まあ、ネットを漁ってください。

十二国記ファンとしては、他の話に出てきた「更夜(こうや)」が天仙「犬狼真君(けんろうしんくん)」として登場したり、
遠い国の王の次男坊が放浪ついでに諸国を見回っているときに主人公に付き合って(巻き込まれて)行くところとか、そういう面白さもあります。
また、王になるために山に登り麒麟に会う(昇山する)人々の細かな日常みたいなものも知ることができるところも面白い点です。
昇山の旅の最後のほうはちょっと急ぎすぎ(もう少しゆっくり味わいたい)ような気もするけど、スピード感があっていいとも思います。

しかし、何と言っても、このお話で一番おもしろいのは、
昇山するという、小さな女の子。主人公です。

非常に裕福な商人の末娘として生まれ、召使のような人々に囲まれ、何不自由なく過ごしてきたが、使われている人々のことにも思いをすることができる。貧しさ故、食べることができない人々のことを考える事ができる。頭のいい子。

「他に王になるものがいないから、自分がなる」と自信満々にしていた様に見える主人公が
旅が進むにつれてたくさん人が死んだり自分が襲われたりした後で吐露する:
王として正しい采配が取れるかどうかなんてわからない。だけど王がいないために国は荒れ人は死ぬ。自分が昇山しようとしたのは国民の義務だと思ったから。何もせずただ嘆いているだけなのは嫌。嘆くにしても、自分が王にふさわしいかどうか確かめてから。

王になって、みんながいいものを着ていいものを食べて、自分一人が贅沢をしている後ろめたさがなくなったら、贅沢のし放題よ、と言う。

さらにこの後が面白いんだけど、それは読んでのお楽しみ。


よく、「残したらもったいない。世界には食べることができずに死んでいく人が大勢います」とか、聞きますよね。
自分も小学校の時とかによく耳にしました。

でも、何かが違う、と、漠然と思ってたんですよ。
はっきりとはわかってなかったんですけど。あんまり頭よくなかったからなぁ。。。

食べきれないくらい食べ物を集めていること、
それによって、食べられない人たちが出ていること。
それがオカシイことだとは誰も言わない。
自分が食べたいものを食べたいから。

集めた食べ物を、食べられない人達に配っても、問題は解決しません。


究極的には、みんなが食べられるシステムを作るしかない。と、思います。

今回紹介した作中では、そのために少女が王になることを目指します。

作中の世界では、麒麟に選ばれれば王になることができる。
財も学も、生まれ育ちも関係ない。王になろうなんて、だからこそ考えつく選択しかも知れません。

この世界では、持たざるものはそのように、持てるものはより持つように、
そういうようにシステムが出来上がっているように思います。
はてさて。



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