2012年12月17日月曜日

前頭葉… というよりワーキングメモリについて



前頭葉の謎を解く―心の宇宙〈1〉 (学術選書)




この本は、どちらかと言うとサルを中心とした実験手法の解説とその結果の読み取りに紙面が割かれているように感じた。

もちろん、重要なことが記載されている。

前頭葉のワーキングメモリ、意思決定機構は、脳内の他の部位からの入力と、入力元への出力を持っていること。その入力元は一次野からというよりは二次野からが多いような印象を受けた(勝手にそう感じているだけかもしれないけど)。

一方、脳の他の皮質においても同様のワーキングメモリ的な構造は存在しているようで、それぞれそのモジュール内で入出力を持っているようである。
いわば、機能特化型のワーキングメモリ。

前頭葉のワーキングメモリは機能特化型ではないようだ。
としたら、機能特化型のワーキングメモリと双方向連絡をしているのかも、と思った。

ワーキングメモリのワーキングメモリ、という構図は、入力器ーワーキングメモリ、ワーキングメモリー出力器という機能に特化していたつながりを、同じ部品、同じ機能を用いながらにして、次元をひとつ押し上げたような効果をもたらしているように思う。

それは、具象的な思考から抽象的な思考へとつながる新たな武器を人類に与え、
同時に人類の宗教・文化・科学・自己の認識・他者への思いやりと戦争、といった特にヒトで発達した、良くも悪くも人間らしいものをもたらしたのだろうと思う。


2012年12月6日木曜日

図南の翼

図南の翼、十二国記の話の一つ。

あらすじは、まあ、ネットを漁ってください。

十二国記ファンとしては、他の話に出てきた「更夜(こうや)」が天仙「犬狼真君(けんろうしんくん)」として登場したり、
遠い国の王の次男坊が放浪ついでに諸国を見回っているときに主人公に付き合って(巻き込まれて)行くところとか、そういう面白さもあります。
また、王になるために山に登り麒麟に会う(昇山する)人々の細かな日常みたいなものも知ることができるところも面白い点です。
昇山の旅の最後のほうはちょっと急ぎすぎ(もう少しゆっくり味わいたい)ような気もするけど、スピード感があっていいとも思います。

しかし、何と言っても、このお話で一番おもしろいのは、
昇山するという、小さな女の子。主人公です。

非常に裕福な商人の末娘として生まれ、召使のような人々に囲まれ、何不自由なく過ごしてきたが、使われている人々のことにも思いをすることができる。貧しさ故、食べることができない人々のことを考える事ができる。頭のいい子。

「他に王になるものがいないから、自分がなる」と自信満々にしていた様に見える主人公が
旅が進むにつれてたくさん人が死んだり自分が襲われたりした後で吐露する:
王として正しい采配が取れるかどうかなんてわからない。だけど王がいないために国は荒れ人は死ぬ。自分が昇山しようとしたのは国民の義務だと思ったから。何もせずただ嘆いているだけなのは嫌。嘆くにしても、自分が王にふさわしいかどうか確かめてから。

王になって、みんながいいものを着ていいものを食べて、自分一人が贅沢をしている後ろめたさがなくなったら、贅沢のし放題よ、と言う。

さらにこの後が面白いんだけど、それは読んでのお楽しみ。


よく、「残したらもったいない。世界には食べることができずに死んでいく人が大勢います」とか、聞きますよね。
自分も小学校の時とかによく耳にしました。

でも、何かが違う、と、漠然と思ってたんですよ。
はっきりとはわかってなかったんですけど。あんまり頭よくなかったからなぁ。。。

食べきれないくらい食べ物を集めていること、
それによって、食べられない人たちが出ていること。
それがオカシイことだとは誰も言わない。
自分が食べたいものを食べたいから。

集めた食べ物を、食べられない人達に配っても、問題は解決しません。


究極的には、みんなが食べられるシステムを作るしかない。と、思います。

今回紹介した作中では、そのために少女が王になることを目指します。

作中の世界では、麒麟に選ばれれば王になることができる。
財も学も、生まれ育ちも関係ない。王になろうなんて、だからこそ考えつく選択しかも知れません。

この世界では、持たざるものはそのように、持てるものはより持つように、
そういうようにシステムが出来上がっているように思います。
はてさて。